お盆は7月？8月？

神崎寺
7月16日
読了時間: 5分

私が子供のころ、夏になればニュースに必ず帰省ラッシュの渋滞と新幹線の乗車率の話が流れて、「大変だなー」と思ったものでした。いつしか、成田空港の出国と帰国のニュースも多くなり、お盆の様子が変わっていきました。かつて、多くの人が東京にきて就職して、頑張って働き、家族をつくり、そしてお盆の季節になると先祖や親族に挨拶するために帰省し、地方では帰省する親族を心待ちにしていたものでした。それゆえに、休日の少ない日本でも8月13日～15日を中心に日本中が夏の休日になるという一大行事でした。今は死語かもしれませんが「盆と正月が一緒にきたみたいだ！」などという表現は、とんでもなく賑やかだったり、人が集まったり、忙しかったりと、とにかく一大事のことを言いました。

このお盆ですが、関東にいる人は「7月盆ですか？8月盆ですか？」なんていう質問がよくあります。何のことでしょう？

これはどちらが正しいとか、そういうものではなくて、明治時代に政府が暦を変更したために、季節をとるのか？暦の日にちをとるのかの違いより2つのお盆が存在します。

日本では明治時代まで太陰太陽暦と言われる月の運行を基本にして3年に一度、、閏月がある暦を使っていました。しかし、時代は西洋化の波が激しく訪れ、明治政府は諸外国が使用していた太陽の運行を元にしているグレゴリオ暦に変更する決定をしました。

すると、おおよそですが、それまでの7月15日と新しい7月15日とひと月近い違いが生じてしまい、ホウズキが色づいていない季節が7月になってしまったのです。政府としては、新しい暦を受け入れて欲しいので、明治政府のあった東京と政府の指導が行き届いた都市と言われるようなところは7月盆になっていると思います。当時は、まだ檀家制度が江戸時代なみにキッチリカッチリしてましたので、菩提寺が指導することで、その檀家のお盆は決定したようです。今となっては、7月でも8月でも、お盆の供養をしてくれる菩提寺さんのご指導に従ってお盆の供養を行えば大丈夫でしょう。少し前だと、違う時期のお盆とかやっていると近所の年寄りにご指導をいただいてしまったりしたようですが、現代は菩提寺が変わることもあるでしょうし、各家の自由に決めてよいでしょう。それよりも、善きお寺、善きお坊さんに良い供養をしていただくことがなによりでしょうね。

さて、お盆のことですが、お盆は、正式には「盂蘭盆会（うらぼんえ）」といい、『盂蘭盆経』というお経の中でお釈迦さんの弟子の目連さんの物語に由来するものです。

　『孟蘭盆経』には、目連さんがお師匠のお釈迦さんの教えにより、餓鬼道におちて苦しむ母を、百味の飲食を修行僧たちに供養し、その功徳によって救ったと説かれています。

　このお経の教えと「先祖の霊が帰る」という古くからある民間信仰が結びつき、お盆の信仰ができました。一般的には十三日に先祖の霊が家に帰り、十五日まで家にいると考えられています。その目印として提灯が必要となり、送り火・迎え火が行われ、家庭に仏壇とは別に、ご先祖様のお席として精霊棚を設け、供養の品々を供えるようになりました。そして、ご先祖様が帰られる場所である精霊棚に供養の読経をあげることを棚経といい、お盆の時期にお坊さんが忙しく各家を回っているのは、そのためです。

精霊棚の作り方は、地方や宗旨によって色々あります。現代の住宅事情では大きなものができないかもしれませんが、大きい小さいではなく、そこにお迎えする気持ちがあるかないかです。できたら、プラスティックやビニール製の偽物の御供物は避けてくださね。

大雑把ですが

基本は

仏壇の外にテーブルや経机などを設け
真菰などのゴザをしく
中心に位牌を置く
花などで荘厳する
ほおずきを吊るす
胡瓜の馬、茄子の牛の乗り物を置く
香炉と燈明と線香を用意する
水の子と言われる小さく刻んだ胡瓜・茄子・米を水さらしした御供物
あとは、供えたいものを日々上げて、3日間のお接待をしてください。

できたら、精霊棚を一緒に用意してくれる子供がいたら一緒やってください。絶対にいい思い出と善き教育になります。今、日本が日本を失いつつあります。どこの国の人でも皆、自国を誇り、自国民を愛しています。日本人だけが日本人としてのアイデンティティを失っています。「先祖さんを大事にして、こんな素敵なことをしてきたんだよ。」と伝えてあげて欲しい。
ディズニー映画の「リメンバーミー」というのがあります。以前に寺子屋の子供たちにも観せてあげたことがありますが、メキシコの死者の日のお話なんです。これが、ほぼ日本のお盆です。日本の年寄りこそ見て欲しいと思ってしまいます。この映画のポイントで「子孫が写真を飾らないと先祖は帰れない」と「子孫が忘れてしまうと永遠に消滅してしまう」というものがあります。仏教的には少々の矛盾が生じてしまいますが、日本仏教のお盆的にはとても納得のいくことですよね。ぜひ、家族で見て、心を育ててください。親があっての子、先祖あっての自分、至極当たり前の事実ですが、信仰から離れてしまえば、自分勝手な自分だけが孤独に生きてしまいます。先祖の供養は自分の心を温かくします。自分を孤独にしません。お盆の機会に始めてください。